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2017年8月

2017.08.07

心を忘れた科学にはぁ~

 数年前、父に買ったタブレットパソコンが故障がちというので、引き取ってきた。父は自分のノートPCを買ったので大丈夫だ。

 このタブレット、Lenovo社製miix2 8という。当初雑誌評価などでも良い話ばかりだったのだが、だから買ったのではなかった。弟が実家に預けきりで馴染んでいた猫が、老衰で亡くなったのだが、それで世話をしていた父がペットロスに陥ってしまったのである。何かに興味を持ってもらわないと急速に老け込みそうだった。
 当時WindowsXPをまだ使っていた父。そこでWindows8の入った新たなパソコン分野であるこのタブレットを贈ったのである。

 父は早速これを使ってみる気になってくれた。
 ゴルフに持っていって見せようとしたら電池切れになっていたなどは、まだ笑える失敗談だった。だがこの機体、どうもスリープ状態から復帰させると応答が無くなってしまうのだという。

 実家に顔を出して症状を確かめた僕は、ネット上にそういった症状がないかと探した。すると今やネット上では「スリープ死」なる造語まで出来るほど、多くのユーザーがこの問題の犠牲になっていた。

 この時点で既に保証期間を過ぎていたので修理も対応せず、仕方が無いので様々な情報に従って修復を試みた。フラットケーブルは勿論、レジューム時のデバイスドライバ再確認のスクリプト、そのほか様々に試してみたが、遂にこの問題は無くならなかった。

 先般父が流石にもう使わなくなったという。僕が贈ったという手前、捨てる訳にも行かないようなので、引き取って帰った。

 父は今は元気にやっている。パソコンだけでなく、ネットで知り合った散歩の会だの、囲碁の会だの、なかなかに意識的に頑張っている。だから結果はオーライなのかも知れない。

 もはや時代も移り、このタブレットは古い機種ともなった。Windows10は対応外だとメーカーは言う。そろそろ想定された利用時期ではなくなっているという事なのだろう。
 だが僕はこの一連の成り行きに、敢えてここに書き留めておきたい。

 スリープ死というこの問題はとうとうメーカー側から何らリコールされなかった。保証期間に修理に出せた人もいたようだが、直ったと思ってもまた再発するようである。今は懐かしきIBMのThinkPadを引き継いだLenovoではあるが、ThinkPadブランドが日本の大和研究所で造られ続けているのに対して、やはり中国製品だとこうした問題製品が出てきてしまうのだろうか。
 国民性の違いから、顧客ファーストのサポート体制をとるかどうかの企業体質は大きく違ってくるのだろう。だが少なくとも言える事実は、企業側の都合で出てくる未熟な製品が引き起こすのは、単なる迷惑だけではなく、人の心に傷を付けかねない問題にも発展するのだということ。
 これは企業側の法人格が心を持たないが故に諦めるしか無い、という話で終わらせてはならないと思う。何故なら企業を形作るのは人間ひとりひとりだからだ。形の無い法人格というものに責任を転嫁して安穏としていて良いわけがない。
 企業というものはその構成員ひとりひとりが、心を持った人間として最大限の活躍をするからこそ、大きな力を発揮するもの。売り切ってしまえばおしまいというのは、本来のビジネスの根幹にある「他人を活かす事によって自分も生きる」という理念に全く反している。

 このような自覚は全ての企業に通じる話だ。今回の問題は一例に過ぎず、他の会社にもこのような心ない利益重視の体質が広く蔓延していると感じている。特定の企業や製品を誹謗するのが目的ではない。むしろこのような製品はまだまだ多いかも知れない。

 子供の頃に聞いたアニメの主題歌にあった。心を忘れた科学には幸せを求める夢が無いという。その通りだと思うのだが、あの頃の考え方はどこへ消えてしまったのだろう。

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