放射性の銀?
久しぶりにK先生から実態を伺った。
福島のある森で採取した昆虫…ムカデ1匹を放射線測定装置で調べたところ、当然のごとくセシウムは出たのだが、他に銀が出たと言う。
え、銀??
天然のウランは238が殆どだが、燃料に使われるのは精製されたウラン235。
235が分裂するから大体130くらいと100くらいに分裂するのだという。
130くらいの代表格がセシウムだ。
天然のセシウムは133で、放射能を持たない金属。原子炉で出来るのは
セシウム134 半分に減るまでに2年
セシウム135 半分に減るまで230万年
セシウム137 半分に減るまで約30年
で、最後の137が大量に出来て、今回放出された。その辺りは他の原子炉事故でも同じなので、これまで注目され、汚染の目安にされてきた。
だが100くらいの方も色々出来る。その中でテクネチウムがある。天然にはあまり存在しないので耳慣れない。
実はこのテクネチウム、構造上で中性子が不足している。それでウラン燃料の中で飛び交っている中性子をすぐに捕獲してロジウムなどの他の元素へ次々変わってゆく。炉内では中性子が飛び交っているから、どんどん変化して、辿り着くのが銀の同位体110。
それが何故重大なのか??
銀110は中性子が飛び交っている場所にあって時間をかけて出来てくる。
例えば原子爆弾では銀110は出来ない。どかんといってそれでおしまいだからだ。中性子の飛び交う環境に長く曝される事がない。
チェルノブイリ事故でも、建屋が爆発してしまったのだから、やはり中性子環境になかったためあまり生成されなかった。
今回の福島の事故では炉心融解のまま長らく熱した大気が放出されてきた。つまり燃料付近では中性子が飛び交う環境が長く続いた。だから銀110が生成され、それが大気に運ばれて出たわけだ。
調べると当時航空機で上空の銀110の分布を調べていたことがわかったらしい。そのくらい大量に噴出したのである。
同じ汚染事故でも今回の福島のは今までのとは違う事が起きているのである。
その事を私たちはまず知らないとならない。
更に銀110は半分に減るまでに約250日。すると福島原発の事故からもう半減期を3回は迎えている。半分の半分の半分ということで8分の1に減っていなければならない。
ところがそれが僅かながらも検出された。昆虫一匹からだ。全体にはどのくらいになるだろう?
銀に限らず放射性物質が昆虫体内に蓄積されている可能性もある。
すると食物連鎖の次に来るのは多分、鳥。。。
実際、現地で鳥の巣などを測ると放射能が強いという。それはそうだろう、鳥の巣の材料は森の小枝やコケなどが含まれていて、降ったセシウムを沢山含んでいるのだから。ひな鳥たちはそういうところで数週間育つわけだ。この様子では生態系に異変が起きてもおかしくなく、実際チェルノブイリではツバメの突然変異が見られている。
鳥が汚染物質を運ぶとなると町に住む人々も恐怖するらしい。ところがK先生は鳥は大丈夫だと言う。
元々鳥というのは身体を軽く保つために、食べるとすぐ消化して排泄してしまうらしい。だから常に餌を探している。こういう生物は体内に留めないので、鳥そのものはあまり蓄積しないだろうと言うのである。
そう意ってK先生は、今度は移動型測定器を携えて鳥そのものを調べるべく、また東北へ旅立った。
まだまだ知らない事が沢山あるものだ。
(追記)文中、銀110というのは厳密に書くとAg110mです。